新田神社/御田植祭
ふるさとのお社探訪
「新田神社」 鎮座地 鹿児島県薩摩川内市宮内町1935番地2
新田神社は、近年全面開通した九州新幹線の終着駅「鹿児島中央駅」の一つ手前の駅「川内駅」より車で約7分の位置にある。新田神社の鎮まる「神亀山」は、鎮守の杜を象徴する樟の古木が生茂る小高い山である。清らかな流れ「川内川」の近くにある山の麓より、322段の古い石段を上る山頂に鎮まるその神社には古来より特殊な神事として「御田植祭」「御神鏡清祭」などがある。
御田植祭
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祭典日 平成24年6月10日(日曜日)入梅の日 祭典時間 - 午前9時 本社祭(山頂社殿)
- 午前10時20分 保食神社祭(山の麓)
- 午前11時 植栽行事(御神田)
- 午後1時 郷土芸能・舞踊奉納(於 山頂社殿)
- 御田植祭に必ず奉納されるのがこの地方独特の踊り「奴振り」である。
一説によると平安時代の中期にこの地方で凶作が続き、農民が苦しんでいるのを嘆いた樋脇町倉野(現在:薩摩川内市樋脇町倉野)の老人が、誠心をこめて御神田のお田植えを奉仕し、奇妙な奴(やっこ)を振り回して田楽に合わせ踊り豊作を祈ったところ、秋には五穀が良く稔ったので、翌年から神社お膝元の宮内地区の人々も参加して御田植祭に踊りを奉納したのが始まりとされている。
奴踊りについて
- 踊り手は菅笠に法被、手甲、脚絆姿の壮年男子、総勢12、3名で、このうち約半数の人たちは3メートル程の竹に、4メートル程の剥ぎ竹約十本をつけた握り太の奴竿を、片や残りの人たちは頭に花笠のようなものに長い房がいっぱいついている3メートル程の奴竿を、グルーッと2、3分おきに回す。この所作は虫追いの所作を儀礼化したものといわれ、苗に虫や病気がつかないように邪気を祓う意味があるとされている。この奴踊りに歌われる田植歌の歌詞は次のとおりである。
(倉野)穂植えてまいらしょ お八幡様よ 前田畝の上 十六町 今日こそ植ゆるは 九石九斗まき
植えてまいらしょ お田の神よ 中に黄金を 植えてまいらしょ
(宮内)物の美事は 八幡馬場よ うしろは山で 前は大川
奴踊りは、昭和38年の6月17日、新田神社の御田植祭に伴う芸能として県無形民俗文化財に指定された。
※参考図書 川内市文化財要覧「川内市歴史資料館編」
御神田への行列- 当日は午前9時からの本社祭に続き、神亀山麓に鎮まる保食神社にて午前10時20分頃より末社祭が斎行される。その後、これから植えられる早苗を担いだ早男・早乙御神田は矢来竹で四方を囲われている。これは御神田への病虫害の進入を防ぐ意味合いと、清浄で神聖な田である境界を示すものである。女による行列が、保食神社より御神田まで進んでいく。
御神田に到着すると、行列は御神田を囲う矢来竹を巡るように田を一周する。
そしてまず宮司による田植えが行われ、引き続き早男・早乙女による田植えが行われていく。
御神田脇では倉野の奴振りが奉納され、その後宮内の奴振りが行われる。
宮内の奴振りは神田の中で奉納され、前半と後半に分かれており、焼酎の酔いが回ってきて踊りの動きが大きくなる後半が見どころである。宮内の踊りが終わると、植栽行事は終了となる。
寄田棒踊りについて
寄田棒踊り保存会が継承しており、奴振りと共に「県無形民俗文化財」である。
寄田棒踊りは、年輩の男2、3人の歌い手の歌にあわせて白鉢巻に黒の絣姿の若者達が、三尺棒を振り上げたり打ち下ろしたり、あるいは棒と棒とを打ち合ったりする勇壮な芸能である。地面を棒で叩く動作が見られ、これは田開きでの虫追いを表現した農耕儀礼説ともいわれる。棒踊りとはいいながら棒は腰に差して、両手を挙げて手踊りする場面もあり、芸能化の進んだ棒踊りである。
主に演技するのは寄田小学校の児童をはじめ寄田地区の青年たちであり、先輩方の指導のもと日夜練習を重ねて、御田植祭当日の午後より奉納演芸の1番目として新田神社御神前に奉納する。