鹿児島神社町 KAGOSHIMA SHRINE AGENCY

鹿児島で最古のおいなりさん

島津忠久公の母である丹後の局が、暴風雨の中産気づかれた際、摂州住吉稲荷神社の神の遣いであるキツネが、灯りをともして出産を助けた。その霊験を偲び、忠久公が薩摩守護職に任用された折、創建されたとされるのが、この日置市東市来町にある「稲荷神社」である。一説には承久3年(1221年)と言われている。数ある稲荷神社の中でも鹿児島では最古の稲荷神社とされ、東京オリンピックの翌年に鎮座800年を迎える。
また境内の裏山は、国の指定である天然記念物「やっこ草」の自生地でもある。椎の木の根に寄生する小さな乳白色の植物「やっこ草」は、毎年10月末~11月中旬頃にかけてそのかわいらしい姿を見せる。

  • 稲荷神社
  • やっこ草

湯之元に春を呼ぶ御田植祭

その名の通り良質な温泉で有名な東市来町湯之元。その湯之元に春を呼ぶと言われる御田植祭は毎年3月3日に行われる。従前は旧暦2月3日に行われていたが、一月遅れで3月3日となった。牛の面が江戸時代のものがあり最低でも二百年以上前から始まったとされるこの祭りでは、五穀豊穣・商工業の発展と幸福を祈る神事が行われる。

  • 御田植祭
  • 御田植祭

ユーモラスな田園劇

かごしま弁で面白おかしく行われる田園劇は、地元の有志によって即興で行われる。劇の主役を担う「テチョ(亭主)」「カカ(奥さん)」「オンジョ(隠居)」役を行う人物は毎年異なり、毎年それぞれの個性が出るのが、また味があり面白い。ユーモラスなやりとりに境内は笑いに包まれる。
田園劇に使われる親牛・子牛の面は、世襲で守られてきた。現在は市の指定有形民俗文化財にもなっている。いくつかの家は途絶えてしまったが、現在も世襲によりその子孫が牛役として田園劇で活躍する。

  • 田園劇
  • 田園劇

五穀豊穣・商工業の発展を祈る神事

田園劇は拝殿横の境内を田んぼに見立てて行われる。テチョ(亭主)役が田を作り、カカ(奥さん)が茶を持ってきて、オンジョ(隠居)を加えた三人で茶飲み話をする。親子牛の田ならしが演じられたら、宮司が「一升まきゃ十三俵」と唱えて籾をまくと、全員で苗に見立てた松葉を植える。「今まいたのにもう苗になった」という縁起の良さと、さらに参拝者へ収穫に見立てた餅まきを行うことで予祝とし、豊作を祈る神事となる。

五穀豊穣・商工業の発展を祈る神事

平成29年の御田植祭を終えて

平成29年3月3日金曜日に行われた今年の御田植祭。天候にも恵まれ、賑やかに厳粛に斎行された。今年は全国で大雨や川の氾濫など、稲作には大変厳しい状況だが、幸いにも鹿児島県や特に神社周辺は、そうした被害にあわずに済んだ。御神徳の賜物と感じている。