鹿児島神社町 KAGOSHIMA SHRINE AGENCY

山宮神社 宮司 藏園修文

 田之浦山宮神社(志布志町には同名の山宮神社が2社あり、区別するため普段は地区名を冠して呼んでいる。ここでは田之浦山宮神社と言う)は、志布志市役所のある志布志町の市街地から北へ約10キロ、志布志町の西部を縦流する安楽川上流の河畔、志布志町田之浦の御在所岳の麓にあり、古くから田之浦地区の鎮守として崇敬されてきた。

 御祭神は天智天皇で、御神体は赤白黒の漆塗り陰陽二神の木像である。祭日の中でも特に2月の第1日曜日に行われる春祭りは、「ダゴ祭り」として広く知られ、民俗文化財として県の指定を受けている。鹿児島県内で最も早い春祭りとして、市内外から多くの参拝者が訪れる祭りとなっている。

     

 春祭りの行事として「ダゴ」と「神舞」の奉納が行われる。「ダゴ」は氏子である田之浦地区の各集落から1本ずつ奉納される。奉納されるダゴは、長さ2メートルほどの唐竹(「つと」という)の上部に藁を巻いて、それに約30センチメートルほどのダゴをつけた串200本ほどを刺したものである。

 

 

 また、「神舞」の奉納も古くから行われてきた。「神舞」は明治32年御神体御更衣の大祭に33段を舞う大神楽が奉納され、今使用する神楽面や舞衣装、その他舞道具等々はその時整えられたと言い伝えられている。

     

 その後も度々大神楽が奉納されたが、昭和17年、現在の社殿新築落成の時の神楽奉納を最後に、一時途絶えていた時期があった。昭和57年、当時の関係者の尽力により、古くからの地域の伝統である「神舞」を将来に継承していくことを目的として保存会が結成され、そして昭和58年の「ダゴ祭り」で約40年ぶりに見事に復活した。

   

 

 しかしながら、約40年間奉納されていなかった神舞は、若者や転入者には全く認識されておらず、また、保存会を結成した当時の関係者も高齢だったため、地域住民に神舞を認識してもらうと同時に、継承者を増やすことを目的として、夜神楽祭として継承実施していくこととなった。

 昭和58年(1983年)から毎年夜神楽を開催した効果により、神楽は地域住民に地域の伝統として認識され、保存会員も増加するなど、活動も活発化し、平成元年には志布志町無形文化財と認定され、さらに平成3年3月には、「ダゴ祭り」行事とともに、鹿児島県の民俗無形文化財として認証されている。

       

 このような状況の中、毎年実施することによるマンネリ化を危惧する声が保存会員の中から上がり、平成9年(1997年)以降、隔年開催に変更されて現在に至っている。

 なお、この田之浦地区は市街地から奥まった山間部にあり、全国的な傾向である少子高齢化の波が、加速度的に進展している地区でもあり、「夜神楽」の継続的な取り組みにも困難な面も生じている。

     

 しかしながら、「神楽の里」として田之浦地区が誇りうる伝統文化を後世に伝承していくことを地区民の総意として、「夜神楽」の隔年実施に地区民が一体となって取り組んでいるところである。

 現在では小学生、中学生、高校生、大人が一緒になって、練習、準備から本番、裏方まで、和気あいあいの中にも年齢差を超えて、一体となって取り組み、毎回「田之浦山宮神社夜神楽祭」として開催し、地区民はもちろん、市内外からの観覧者も多数に上っている。

     

 前回令和元年11月30日(土曜日)、かがり火が照らす中、田之浦神楽殿(地区の集会施設を兼ねる)において、子供神楽を始めとして全24段の神楽を奉納・発表し、観覧者から大きな賞賛と激励の拍手をいただいた。

 今後も、この伝統文化を後世に伝承していくために、地区民が一体となってその存続と新たな舞の復活に向けて、更に努力していく所存であります。

 

山宮神社

【鎮座地】志布志市志布志町田之浦559